20XX年、人類が『 魔法 』と呼ばれるものを発見し、早10年が過ぎた頃の日本。
魔法の影響により爆発的な進化を遂げた東京は近未来化が推し進められ、新時代に対応していくべく、魔法教育に力を入れていた。
やがて国は東京のド真ん中に大きな大きな学園〈 通称:イヴ 〉を建設し、国で初めて〈 魔法科 〉を設置。次いで学園に広大な敷地を与えた。
イヴは中高一貫の学園で、入学すれば卒業するまで家族と自由には会えない。それほど厳しい学び舎である。
そして民間人は、生徒と関係者以外の立ち入りを禁じた敷地をこう呼ぶ。──『 鎖国の学園都市 』と。
──それから半世紀。
イヴは開校60周年を迎え、卒業生に著名な人物を多数輩出。世界でもトップクラスの名門魔法学園に成長していた。
学園都市は生徒と関係者以外の立ち入りを禁じ続け、その内部は未だ秘匿のまま。
……だが、それ故に世間には知られていない事実が存在する。
全校生徒5000人を誇るイヴ。
──今、その内部では。
〈 旧体制派 〉そして
〈 革命派 〉により、
学園の権力を争う【 学園戦争 】が行われていたのだった。
「 …これは世間の誰もが知らない、僕たちの戦争記録 」
「 悲しくも美しい、僕たちの3年間 」
── ・ ── ・ 以下、資料 ・ ── ・ ──
【 資料1 】イヴ関係者による証言
イヴの勢力戦争について話すなら、まず語らなきゃいけないのはイヴの体制だね。
イヴは生徒の自主性をとっても尊重する学園なんだ。だから学園の運営も生徒会が行なっていて、実質的に学園のトップは生徒会ってことになってるんだよ。
…で、その生徒会の直属の組織として存在するのが『 風紀委員会 』と『 中央委員会 』。
この2つの委員会と生徒会は開校からとっても関係が密でね。3つを組織をまとめて『 生徒会グループ 』って呼ぶんだ。
「 生徒会グループに1年以上所属した者は将来の出世が確実なものになる。」そんな言い伝えがあるくらい、生徒会グループには権力が集中していてね。一般の生徒たちは常々それを不満に思ってた。
──そして、その不満が爆発したのがとある事件。
ある夏の日のことだった。
風紀委員会の副委員長の足をうっかり生徒が踏んでしまって、ちょっとしたトラブルが起きたんだ。
踏まれた副委員長はわざとやられたものだと思って大激怒してね。その生徒を魔法で攻撃して、小さいながらも怪我を負わせてしまった。
これを生徒たちは好機だと思った。だって権力があるから逆らえない生徒会グループに攻撃する大義名分を得たから。
で、生徒たちは学園の権力を生徒会グループに集中させる体制を崩壊させようと奮起したわけだ。
でも最初は小さなものだったよ。魔法でドンパチ…なんてほとんどなかったからね。
風紀委員会はそれでも驚いたんだろうね。中央委員会に声を掛けて立ち向かう姿勢を見せたんだ。
──そして、その争いに転機が訪れる。
そう、遂に『 争いに生徒会が介入した 』。
学園のトップだった生徒会は最初は静観してたんだけど、やっと争いの仲裁に入ろうとしてね。
で、風紀委員と生徒、どちらにどれだけ制裁を与えようかって話になって──内部分裂した。
当時8人いた生徒会の中に、生徒たちを弾圧して生徒会グループの権力を守ろうとする『 旧体制派 』と、このままじゃダメだって立ち上がった『 革命派 』がいたんだよね。遂には話し合いもできなくなって、生徒会それぞれが争いに加わった。
小さな喧嘩はいつのまにか学園の権力を奪い合うものになってたんだ。
……これが3年前の話。
お察しの通り、全然事態は良くならないまま今に至るわけだよ。むしろ悪化してる。
目が合ったら魔法でドンパチってことはほとんどないけれど、それも全くないわけじゃない。中には闘争心の強い生徒もいるからね。
もちろん中にはそんなの気にせず仲良くやろうよって人もいるみたいだけどね。でもごく少数だし、この学園じゃ表立ってそんなこと言えやしない。白い目で見られるから。
───まあ、こんなところかな。
…全く嫌になるよね。…いつになったら息苦しいのは終わるんだか。
【 資料2 】用語解説
── イヴ周辺について
〈 魔法 〉
60年ほど前、世界に突如現れた異質な存在。発覚した当初こそ大混乱だったが今や魔法は生活に根付いていて、魔法科もいくつか存在するようになった。魔法は何も杖を振らないと出ないわけじゃない。手から炎を出す人もいるし、足の裏から出す人もいる。もちろん杖から出す人もいて人それぞれだ。
〈 学園都市 〉
イヴが所有する敷地の俗称。生徒5000人のための街であり、イヴの生徒とその関係者にしか立ち入りが許されておらず、『鎖国の学園都市』とも呼ばれる。
東京のド真ん中に存在しているが周りを高い壁で囲われており、生徒は卒業するまで自由に学園都市を出られず、寮生活を余儀なくされる。もちろん教師やイヴに関わる人もほとんど学園都市内に住んでいる。
設備は非常に整っており、店は基本人型のアンドロイドが経営。八百屋から大型ショッピングモール、映画館に遊園地まで施設は様々。
〈 イヴ 〉
正式名称は『 国立哨聖学園中学校・高等学校 』。学園都市に建つ中高一貫の大きな大きな学園の通称であり、正式名称よりイヴと呼ばれることの方が圧倒的に多い。設置されているのは魔法科のみ。
またイヴでは一般教養を極限まで減らし魔法に関する様々な授業を行なっており、『呪文学』『魔法薬学』『魔法史』など科目は多岐にわたる。
※ 科目に関しては某小説よりお名前を借用しております ※
〈 学生寮 〉
学生寮はイヴを円形に取り囲むようにして建っており、1-A男子、1-A女子といったようにクラス男女別に建物が分かれている。原則異性の寮に出向くことは禁止であるが、見つかったところで特にお咎めはない。
〈 イベント 〉
学園都市に閉じ込められた生徒が退屈しないよう、学園都市ではイベントがたくさん存在する。夏祭り、文化祭、小さいものだと月に一度バザーをやっていたり。そんな日は生徒たちも熱に浮かされ、少しは争いのことを忘れる…かもしれない。
── イヴ内部について
〈 生徒会 〉
生徒の自主性を重んじるイヴにおいて、実質的にイヴの運営を行う存在。
選挙によって選ばれた高等部の生徒8人で構成される。数年前に対立が始まった際、当時の生徒会が内部分裂。当時の役員は卒業済みであるものの生徒会の分裂は今も続き、学園の権力争いの中心となっている。
〈 生徒会グループ 〉
生徒会とその直属の組織、風紀委員会と中央委員会をまとめた通称。学園の権力は実質的にこの3組織に牛耳られており、それを不満に思う生徒は少なくない。生徒会グループに所属したまま卒業すれば出世は間違いないとまことしやかに囁かれているらしいが──。
〈 旧体制派 〉
旧体制を守ろうと立ち塞がる派閥。風紀委員会、中央委員会の大多数と、生徒会のうちの半数がこれにあたる。元々生徒会グループが成績優秀者の集まりであるため、個々の能力が高い。
〈 革命派 〉
権力を集中させ、様々な利益を得ている生徒会グループを打破しようと立ち上がった派閥。一般生徒の大多数と、生徒会のうちの半数がこれにあたる。
── その他
〈 国 〉
この生徒たちの騒ぎを教師たちは何もせずただ俯瞰しているだけ? ──いいや、そうではない。
もちろんこの対立の現状は国のお偉いさんにも伝わっているが、国はこれを『好機』とみなした。争えば競争心が生まれ、更に有能な人材が出てくると踏んだのだ。故に教師たちは口を出すことも許されず、中立の立場で皆を見守っている。
【 資料3 】イヴ全体マップ
| B1F |訓練場
・訓練場α
| 1F | 玄関ホール
・生徒玄関
・ホール(講堂)
・体育館
| 2F |中等部教室棟
・中等部職員室
・中等部教室
| 3F |一般教養棟
・図書館
・音楽室
・家庭科室
・理科室
・美術室
| 4F |休息棟
・カフェテリア
・購買
・食堂
・訓練場β
・保健室
| 5F |学問棟
・魔法史の教室
・研究室 Ⅰ 〜 Ⅲ
・魔法武器学の教室
・魔法武器学の研究室
| 6F |高等部教室棟
・高等部職員室
・高等部教室
| 7F |学問棟Ⅱ
・呪文学の教室(学科共同)
・魔法薬学の教室
・研究室 Ⅳ 〜 Ⅷ
・魔法史 資料室
【 資料4 】つまり?
近未来の魔法学園で権力を守らんとする旧体制派と革命派が対立して戦ってるよというお話。
学園を運営してる生徒会も分裂し、国もどうもしてくれないからひたすら争いを続けている状態です。
こんな殺伐とした学園で戦うも恋をするも友情を育むも己次第。精一杯生きながら青春を謳歌しましょう。