この帝国で最上位に座している公爵家には公女がいた。
だがその公女は船の事故の際齢7歳にして行方不明となった、同乗員は全員死亡。公女の生存も皆諦めていた。
しかし、公爵家は他家に弱みを見せることを恐れ、貧民地区で震えていた同い年、そして同じ髪色同じ瞳の少女を公爵家に迎い入れる事とした。
少女は皆の期待を裏切らぬよう努力を重ね、齢17歳になる頃には立派な公女として役目を務めていた。
―――18歳の誕生日の日。本物の公女様が公爵家に姿を現した。
この事は少女を一気に地獄に叩き落とすものであった。父親は悩んだ、10年以上この家に尽くしてくれた少女を追い出すのも可哀想、しかし実の愛娘を追い返すなど以ての外だった。
暫くの間屋敷には公女が二人存在していた、だが其の頃からだった。
使用人が怪我をしたり、自殺をしたり。飼っているペットが死んでしまったりと不幸な事が続いたのだ。皆、気のせいだと思い込んだ。そして公女は何よりも清廉でまさに聖女の様だと評されていたので彼女への疑心を誰もが打ち消した。
そして少女にとって、二度目の転落が訪れる。
公女が少女とのティータイム中に吐血をした。原因は毒を盛られた為だった。
何とか命を取り留めた公女は少女にこういった
「どうして、私の事が嫌いなら素直に言ってくだされば良かったのに」「邪魔だと仰るなら素直に出て行ったのよ、貴女はこの家に10年以上尽くしてくれたのだから!」。
少女は意味が分からなかった。だって、そんなことをしようなんて思いもしなかったのだから。公爵は激怒した、そう。10年以上傍にいた血のつながらぬ娘より、10年もの間離れていた血の繋がった娘を信じたのだ。兄も、同様だった。
「私はやってない、お父様!信じてください!」「お兄様!お願い信じて!」
「貴様は私の娘などではない」
私は屋敷の地下牢にみすぼらしい姿で投獄された。
食事は一日半分のパンとコップ一杯の水。
それも長くは続かない、少女は処刑を言い渡されたのだから。
処刑の日の早朝、公女が牢屋の前に立ち鉄格子を握って私を見詰めていた。
酷く冷たい目で、私を見下ろしていた。
「…ど、うして。」
「邪魔なのよ、貴女。今までお家の為に尽くしてくれたようだけど、もう本物の公女の私が帰ってきたからいらないでしょ?だから不器用だけど優しいお父様の代わりに私が貴方を掃除しやすいようにしてあげたの。自分で毒を飲んでね。」
「そんなッ…酷いわ!お父様とお兄様を騙すなんて!!」
「…本当にいい子なのねぇ。自分の事よりも偽物の愛を与えて満足していたあの人たちを気遣うなんて。貴方がそんなにいい子だから色んな事件が私の仕業だって気づいた存在を消すのに苦労したわ」
「そんな…酷い……」
冷たい言葉の数々が頭上から降り注ぐ。
そう、本物の公女はこの上なく悪女で、性格が規格外に悪かったのだ。
使用人が怪我をしたり自殺したり、それは全て彼女の仕業だった。
少女の目には公女が悪魔に見えた。
「ふふ。…別に他言してもいいけど誰も貴方の言葉なんて信じないわよ。」
そういって公女は去っていき、少女は泣き崩れた。
そうして迎えた処刑の時間。
目の前には斬首台、視界に映るには愛おしい家族だった者たち。
私の身分は自ら公女と名乗り公爵家を騙していた下民と扱われ、虚偽罪、侮辱罪、公女毒殺未遂の事件として断罪される。
「お兄様!違うのです、私は何もしておりません!」「全ては公女様がなされたことなのです!」
泣きながら必死に叫ぶ、叫んで。叫んで――、助けてくれると信じていた。
けれど兄は、
「あの罪人の目を焼き、嘘塗れた舌を切り、首を落とせ」
と冷酷に告げた。
私じゃない、私は何も悪くない!そう叫んでも叫んでも父と兄は震える公女の頭撫でていた。
多くの民の前で私の両目は焼かれた。、舌を切り落とされた末に首は落とされた。瞳が焼かれる一瞬前公女の醜い笑顔を生涯忘れることはないだろう。
どうして私を信じてくれなかったの、もし、もう一度人生をやり直せたならもう二度と―――。
同じ過ちは繰り返さない。
少女が目を覚ますとそこは見慣れた天井だった。
あれ、もしかして時間が巻き戻ってる!?
これはきっと神様がくれた最後の機会ね、と少女は涙しそして決意した。
貴方達を絶対に許さない。
「この家の者達を全員不幸にしてあげる」、少女は笑った。
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兄や父も記憶が時々フラッシュバックするような感じを考えております。
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